第9回 イベントレポート「春草 絵未 ” Jumping Over Lightly “
実際に自分が普段の生活で目にした事物しか描かないという春草の作品には、様々な事物がカラフルなグラデーションを帯びた線で浮遊するような印象で配置されていることが多い。会場では実際にその描き方も再現してもらった。
日常的な事物を通して、別の世界を表現する春草の感覚には、日常を「軽やかに飛び越える」ことを実現しているように感じられる。
今回のトークの中で特に印象的だった春草の話は、「母親との最後の会話が、ごく日常的な“行ってきます”“行ってらっしゃい”だった」ということ。普段は気にもとめない日常の会話も事物も同じように、何かを繋ぎとめるためのとても大きな意味を持つことがある。
人が亡くなる時に観ると言われる走馬灯現象があるとしたら、春草の作品に描かれるように、日常的な事物がほのかな輪郭をもって表れては消えを繰り返すようなものかもしれない。
春草にとって松嶋シェフは、「軽やかに国境を飛び越えている」印象を持つと言う、松嶋シェフは「僕にとって海を越えると言う感覚は、初めて九州から東京に出てきた時に感じたことであり、そこから先のフランスもその延長線上にあるので、フランスに行くことにはあらためて“海を越える“という感覚はなかった」と言う。
トークが終わった後、次々と食事が運ばれ、参加者はワインを飲みながら、さらにアートを介して初めて出会った人とも会話を楽しんでいた様子。
コミュニケーションの壁を軽やかに飛び越えるのに、食とアートは役に立っている、と再認識させてもらいました。
2011年に入って最初の食とアートの会となりましたが、おかげ様で今回は早々に定員オーバーとなり御参加の受付を締め切らせて頂きました。
まずは、皆様のご支持に感謝するとともに、今回御参加頂けなかった方たちにはお詫び申し上げます。
尚、春草絵未の展示は既に終了しておりますが、個室にある3枚組の大作のみ3月中はまだ展示しております。
次回、第10回目は4月5日(火)の開催です。テーマは「日本画」。詳細は近日お知らせします。
Text : Yoshinori Tsukuda
Photo : Shinya Hirose